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第3話 色の嗜好
色の好みは、環境・時代・年齢等によって大きく変化します。第3話では色の嗜好に及ぼす様々な影響についてお話します。
- 年齢
人は生まれてから3ヶ月程で色の区別がつくようになります。乳児が好む色の順番は実験によって分かっており、一番好きな色は「黄色」続いて「白・ピンク・赤」で、嫌いな色は寒色系の色と、特に黒を嫌います。赤ちゃんに着せるベビー服も、お母さんが着る服も明るいパステルトーンがお勧めです。
人は生後6ヶ月程で原色をはっきり識別できるようになり、生後9ヶ月には成人と同じ140億個の脳細胞が出来上がります。ですから、この6ヶ月から9ヶ月の間に赤ちゃんの好きな明るい色をたくさん見せてあげるのは脳と心の発達にとても大切なことです。明るい色の服、白い服は体に必要な光を透過してくれるだけでなく、私たちの体の新陳代謝を高めてくれる働きがあります。
その後の色の好みは環境によって大きく変わってきます。幼少期に母親がよく着ていた服の色、よく食べた好物の色、よく遊んだ海や山の色など、10歳頃までの環境の影響力がもっとも強く、次いで、現在に近い時期の影響が強くあらわれます。 一般的には5~6歳では赤・青・オレンジ等のはっきりした鮮やかな色を好みます。12~13歳頃色彩感覚は大人なみになり、また40歳頃好みが変化すると言われています。
- 流行色と食べ物の色
透明のビニールバックが流行した年、ナタデココが大流行しました。そして、黒い服が流行した年にはイカ墨が流行しています。さらに、淡いピンクが流行した年にはピンクのカクテル「ピーチマルガリータ」「ストロベリーマルガリータ」が他の色のカクテルの2倍以上売れたそうです。流行は知らず知らずのうちにこんな食べ物にまで影響を及ぼしているのです。
- 時代
色の流行はその時代の雰囲気をとてもよく反映します。好景気の時には明るい色、不景気の時には暗い色が流行しています。戦前の日本人が好んだ色は「さび」や「いき」で、渋味と多彩な色が日本芸術の特徴でもありました。でも終戦後は様々な国の文化が入り混じり、どんな色でも受け入れられるようになります。
戦後から昭和30年頃までは昔から日本人が好きだった「赤・青・緑・黒」が好まれていますが、昭和38>年、東京オリンピックの前の年に白や水色、クリーム色等の淡く明るい色が流行しました。昭和40年代の好みの色は白や淡い色が中心となり、40年代後半高度経済成長期には鮮やかな色が好まれ、あらゆる色が受け入れられる「色彩氾濫」の時代となりましたが、不況の年には暗い色が流行するようになります。
1973年の第一次オイルショックではナチュラルカラー、アースカラー、カーキ、オリーブ等のくすんだ茶系統が流行し、不確実性の時代」といわれた1980年代にはモノトーンが流行、1990年代にはエコロジーカラーが流行しています。 世間の人は皆、時代の雰囲気を感じ取って、気分も明るくなれば生活も派手になり、好む色まで自然と変化してしまうようです。
このように年齢や時代からも知らず知らずのうちに私達の生活に『色』が大きく関係しています。もし私達の目に入るもの、例えば空の色や木々の色までもが全て黒やグレーだったら気分はどうでしょう?想像しただけで気分が暗くなりますね。普段から明るい色のものを選んで気分を明るくする事は、私達の生活を楽しく過ごす上でとても大切なことに思えます。